4. 人材教育
<オーダーメイドの教育体系>
- 嶋内
- 朝川から企業の教育投資の話も出ましたし、先ほど内田会長の方からも、人材力でカバーしていくんだというお話がでましたので、ここでぜひ、はんしん様の社内教育について、教えていだたければと思います。
- 朝川
- 以前お目にかかった時に、「やはりこれからは教育なんだよ」という話をされていましたが、あれからずいぶん変わりましたか。
- 内田
- 私が思っているほど変わらないですけどね。ただ、何か学ぼうという意欲がある人間が、前よりは少し出てきているなという感じです。今、中小企業診断士に挑戦しようという人間が、十数人はいますので。こういうことは段階的にやらないと、いっぺんにできませんからね。しっかり知識を身に付けようと考えている者が徐々に増えてきているということで、そういう面では少し変わり始めたというところです。
- 嶋内
- これからは、具体的にはどのような教育をしていくのですか。
- 内田
- 教育については、私は理事長に就任した時に、拡大均衡の政策とともに「人材育成が最終で最大の目標です」という話をしたんです。じゃあこれからはどういう教育をしていくのかというと・・・。
従来は型にはまった、「1年目はこういう教育、2年目はこう」というような、階層別教育だったんですよね。しかし、私は、そうじゃないと。「これからは色々な事が起きてくるので、オーダーメイドで、その人の身の丈に合った教育をしていくために、教育体系を変えます」ということで、従来、階層別でしかなかったものを、まさにオーダーメイド的なものにして、今は100ぐらいの講座からその人にあったものを選択できるような体系になっています。
- 朝川
- すごいですね。
- 内田
- 就業教育はまた別にありますけれども、他に土曜セミナーとか通信教育とかいろいろなものがありますよ。
それから少し動機づけも必要だろうということで、全部ポイント制にしましたので、あるポイントをクリアしないと次長にはなれません。これには弊害もあるんですよ。例えば、ポイントを積み上げることを目的にしてしまう人も出てきます。その場合は、「能力というのは知識と経験だから、そのための知識だから、生かさなかったら知識じゃない」ということを徹底しなければなりません。
- 朝川
- とてもよく分かります。
- 内田
- それから仕事はよくしているけれど、残念ながら知識とか学問的なことになると苦手な人もいますので、そういう人をどう引き上げるかという問題はあるんですが。
特に金融機関というのは、一番大事なのはゼネラリストなんです。なぜならば、こんなに全ての企業を相手にするような仕事はないわけですよ。全ての業種が相手になるわけですから、幅広い知識のゼネラリストが必要だし、あるところはやはりスペシャリストではなくてはならないので、広さと深さの両方を考えなくてはいけません。だから、まずはゼネラリストになりなさいと、その中で自分がこれはというものを深めてくださいと言っています。その代表例が、中小企業診断士であり、FP(ファイナンシャルプランナー)の1級などです。
- 嶋内
- そうですね。私たちUSEIが、ものづくり・商業・サービス革新補助金というのを取らせていただいた時に、「経営支援室の人はすごく優秀だな」と朝川とも話していたんです。
- 内田
- 彼らもほとんど中小企業診断士ですからね。
- 嶋内
- そうでしたね、診断士の方でした。すごく親切で、かつ、やはりキレますね。すごくいいなと思ったのを覚えています。経営支援室というのも、内田会長の肝入りですか。
- 内田
- そうですね。
- 朝川
- 素晴らしいですね。これからはコンサルティングの力ですね。
- 内田
- コンサルティングの力というのは、当然、サービス業には必要になってきますね。
<ゴープラポイントプログラム>
- 嶋内
- お話を伺っていると、はんしん様のやっている教育体系は、良い部分だけではなく弊害もある中で、ゼネラリストを求めていくけれども、ある部分はスペシャリストでなければならないなど、すごくバランス良く考えていらっしゃると思うんです。社長、USEIの教育はどうなんでしょうか。
- 朝川
- 基本的に、考えが本当に似ています。
- 嶋内
- そうですね。
- 朝川
- うちでもやはり頭が良い人はいて、テストではちゃんと良い点をとれるし、色々な試験もよくできるんですけれども、店長に向いていないとか。本当に何でだろうと思うんですが、やはりそれは特性なんです。そういう特性をもっているからといって、クビにするのかというのは違うと思うんです。
- 内田
- そうです、そうです。
- 朝川
- ですから、その頭の良さをどううまく活躍させるのかは、会社に問われていることなんだと思います。
むしろテストは苦手でも、客数は上げられる場合があります。このような難しさやギャップが、B to Cのビジネスの面白さでもあり、人間と人間のサービスの面白さかなと思うんです。
- 嶋内
- そうですね。私たちの会社もポイント制をやっております。はんしん様のように、100の講座は、私たちにはとても作れませんが、読書リストやDVDのリストは朝川と私でセレクションしまして100以上ございます。それを読んだり、視聴して、感想文を出してもらうことを続けています。
- 内田
- なるほど。
- 嶋内
- USEIには柱が2つございまして、一つは職位に応じた実績を評価。これはたぶんどこの会社でもあります。もう一つが、ゴープラポイントプログラムにより自発的な人才開発(USEIでは“人材”を“人才”といっています)を促す。これは自己育成なんですね。
例えば、課題図書の感想文を書いてもらうと500ポイントという具合に、ポイントをためて色々なものに変換できるというものです。8,000ポイントになりますと、先程お話したアメリカ研修に行く権利が得られます。
- 内田
- なるほど、それでどうですか?
- 朝川
- これが一つのモチベーションになっています。すごくシンプルなんですが、とても良く動いているプログラムになりました。
- 嶋内
- 始める時は、さあどうしたものかなと思いながも4年、5年ほどやっているんですが、ここまでやりますと、やはり一定の効果が出ます。読んだもの、見たものをきちんと書くことによって、考えがまとまるし、書く能力、表現する能力も高まります。それがやはり現場実務に今、生きています。